参考:Quora
Kaji Nobutaro, 科学ジャーナリスト
更新日時:5月11日
新型コロナウイルスに関して既感染者がワクチンを打つべきかについてはまだ結論が出ていません。以前に、医学誌ランセットに載った論文に土江下記(---以下)のような事を書いてます。この論文では、65歳以上では感染による防御効果が落ちるから高齢者は既感染者でもワクチンを打つべきと推奨しています。しかし、その結論には下記で書いてるような疑問があります。
そこで、接種するかどうか決める前に確かめられるなら次の事を確かめておくといいかもしれません。①本当に感染だったのかどうか。偽陽性ではないか。②感染していたとしても、免疫で抗体がちゃんとできて、今も残っているかどうか。
つまり、血液中に抗体があるかどうか抗体検査で確かめればいいのです。十分な抗体が存在すれば、改めてワクチンを打つ必要性は未感染の人に比べかなり低いでしょう。もし、抗体がなかったら打った方がいいと思います。
抗体があった場合でも、打っていいと思いますが、後は考え方次第です。「より危険な未感染の人に譲った方がいい」、「今は抗体があるんだから、むしろ、抗体が減るまで待って、後で打った方がいい」などです。
後、いつになるか分からないですが、ワクチンメーカー各社が変異株対応のワクチンを出してくるかもしれません。もし、感染したのが従来株の可能性が高い(変異株登場前だったなど)なら、それを待って打った方がいいかも。変異株対応型が必ず出るという保証はありませんし、出たら出たで、もう1回打てばいいかもしれませんが。
*なお、言わずもがなですが、もちろん必ず主治医の助言を受けてください。
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医学誌ランセットに、デンマークの調査で、再感染率は0.65%、1回目の感染による感染防御効果は80%という論文が載りました。昨年の第1波(3-5月)でPCR陽性だった1万1068人中、第2波(9-12月)で陽性になった人は72人(0.65%)。第1波で陰性51万4271人中1万6189人(3.27%)が第2波で陽性になったのと比較したという研究です。
防御効果が意外に低い感じですが、この0.65%が本当に再感染なのかどうかなど問題点がいくつかあります。
1)第1波のPCR検査陽性者(53万3381人中1万1727人*)では半分近い偽陽性(約5200人 45%)がいた可能性がある(非感染者が陽性になる確率を1%とした場合=特異度99%)。第2波で陽性になった72人は既感染者ではなく偽陽性だったかもしれない。
2)人口の70%が1人当たり2.7回ほどPCRを受けているが、全員検査ではない。
第1波で陽性だった人は疑わしい症状が出たなどよほどの事がなければ2回目の検査を受けないのではないか。2回目の検査で再感染率が高めに出る可能性がある。
3)抗体のデータがない。仮に、72人が再感染だとして(a)1回目の感染で抗体ができなかったのか、(b)抗体が一度はできたが消えてしまったのか、(c)抗体が残っていたにも関わらず再感染したのか、区別がつきません。
65歳以上ではこの防御効果が45%に落ちるから、高齢者は既感染でもワクチンを打つべきと推奨しているのですが、(a)、(b)、あるいは、1)なら、抗体検査をして抗体のない人だけ接種するべきでしょう。
c)だったらそもそもその人にワクチンの効果があるのかどうか疑問ですが。
5/11補足です。
未感染者の場合、ワクチン1回接種だけでは、獲得免疫が不十分だが、既感染者は1回の接種で強いブーストがかかるという結果が報告されています。ということは、感染済みの場合、ワクチンは1回だけで十分な可能性が高いです。