「お酒のある会食を2回以上」で感染リスクは5倍以上

参考:2021年7月7日(水)配信 橋本佳子(m3.com編集長)

感染研パイロット調査、「大人数や長時間におよぶ飲食」

発症から過去2周間以内の「大人数や長時間におよぶ飲食」で3倍以上、「お酒のある会食を2回以上」で5倍以上、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染リスクがそれぞれ高まることが、国立感染症研究所感染症疫学センター長の鈴木基氏らの研究で、改めて確認されました。7月7日の厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(座長:脇田隆字・国立感染症研究所所長)の第42回会合に、「新型コロナウイルス感染症の社会行動リスク解析:パイロット調査の暫定報告」として掲示されました(資料は、厚労省のホームページ)。

「換気の悪い場所にいた」や「手の届く範囲で会話をする機会」なども、感染リスクが高まる傾向が見られました。

テレワークの実施については、有意差が見られなかったものの、感染リスクが低くなり、鈴木氏は会合後の記者会見で、「テレワークを推進した方が、感染リスクを減らす可能性があると理解している」と説明。

鈴木氏は、「あくまでもパイロット研究の暫定的な解析結果。サンプルサイズが小さく、今後の症例数の増加、流行・対策状況の変化によって結果が変わる可能性がある」など、今回の症例対照研究には限界があると断りつつ、「酒がある、なしを問わず、会食に複数回行った人は感染のオッズ比が高い。酒を飲んでいるとこのオッズ比がさらに上昇する可能性がある」などと警鐘を鳴らしました。

(2021年7月7日厚労省新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード資料)

今回の研究は、「3密」「5つの場面」など感染リスクが高い場面や行動について、対照群と比較してエビデンスを求めるのが目的です。今回報告されたのは、そのパイロット調査の暫定報告。

対象は、2021年3月30日から6月8日までの間に、都内の2カ所の医療機関の発熱外来を受診した患者。最終的に解析したのは284人。うちCOVID-19陽性は29人(10.2%)で、陰性255人(89.8%)を対照群としました。年代は20代から70代以上まで。男性150人(52.8%)、女性134人(47.2%)。基礎疾患は「あり」146人(51.4%)、「なし」138人(48.5%)。発症日から過去2周間以内の行動歴などを調査しました。

その結果、「大人数や長時間におよぶ飲食」は、オッズ比が3.92(95%信頼区間1.14─13.4)で、有意差が見られました。年齢・性別・基礎疾患で調整した調整オッズ比でも3.30(同0.90─12.1)。「お酒のある会食2回以上」では、オッズ比5.89(同2.09─16.6)、調整オッズ比4.94(同1.67─14.6)で、いずれも有意差がありました。

テレワークについては、75%程度・100%程度の場合、オッズ比0.47(同0.10─2.14)、調整オッズ比0.33(同0.07─1.60)で有意差がなかったももの、感染リスクが低くなる傾向にありました。

他方、「マスクなしでの会話」は、オッズ比1.09(同0.42─2.83)、調整オッズ比1.02(同0.34─2.76)にとどまりました。この理由について、鈴木氏は、▽マスクの効果を検出するには、今回の研究ではサンプルサイズが小さく、明確に差を捉えることができなかった、(2)COVID-19陰性者の中には、他のウイルス性疾患等が含まれている可能性があり、両軍ともにマスクの効果があれば、オッズ比では差が見られない──という2つの可能性を説明しました。

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