６月の総会で、大分県歯科医師会長に脇田晴彦氏（佐伯市）が就任しました。食事や会話を楽しむ他、かみ合わせを調整することでバランス感覚が良くなり高齢者の歩行を改善することにもつながるとされ、口の健康は健康な生活を送るのに欠かせません。新型コロナウイルス禍による診療への影響や口腔（こうくう）ケアを通じた地域社会への貢献などを聞きました。

　―コロナ禍での新体制の発足となりました。どのように運営をしていきますか。

　新型コロナ感染拡大の影響を受け、この１年半は、実際に集まって開く研修会や交流などが全くできませんでした。実際に集まって情報交換をしたり、手技を学ぶことは大切だと改めて実感しています。ただ、インターネットでの研修で最新の話題などは共有しているので、コロナ禍でも会員がスキルアップができるようにしっかり支援したいです。

　―診療への影響は。

　治療よりも定期検査を控える人が増えているようです。口は食べる、話すなどの機能を担い、生活の質（ＱＯＬ）を支える場所なので、日常的な口腔ケアは重要になります。歯科は歯だけでなく、嚥下（えんげ）（飲み込み）や発声、かみ合わせなど全身の健康につながる治療にも関わっているので、定期的にかかりつけの歯科医院で検査をしてほしいです。口の中を清潔に保つことはコロナをはじめとした感染症予防につながります。毎日のケアもしっかり心掛けることも大切です。歯科治療を原因としたクラスターは発生しておらず、感染対策も徹底しているので、安心して受診してほしいです。

　―地域や社会にどのように関わっていきますか。

　２０１８年に一般の歯科医では対応が難しい障害児・者の治療をする「県口腔健康センター」を大分市の県歯科医師会館に開設しました。患者も増えてきていて、必要としている人が多かったことを実感しています。ただ、センターのことを知らずに治療を諦めている人もいるとみられるので、普及啓発活動に力を入れたいです。事件や事故、災害などの際に歯型から身元を特定する県警嘱託歯科医については、大規模災害でも対応できるよう各地域の歯科医師会とも協力体制を構築したいです。

　―今後の課題は。

　高齢者の口腔ケアは健康寿命を延ばすためにも不可欠だと感じています。私は佐伯市で開業しているが、通院するための交通手段がない患者もいます。これからは歯科医がしっかり地域に出て、支援することも求められています。医科歯科連携も進めており、がん手術前後での口腔ケアでは地域がん診療連携拠点病院と協力体制を築いています。手術前から口のケアに関わることで、術後の患者のＱＯＬを高めていることが分かっています。今後は他の疾患などにも広げて、県民の健康に寄与できればと考えています。