別にコロナに限った話じゃないですが、ワクチンを打ったところで、感染しても発病しなくなったり、発病しても軽症で済むだけで、ワクチンを接種しても感染してキャリアになる可能性は十分にありますよね?

参考:Quora

Sei Tetsurou, 副院長(2012年~現在)
回答日時:7月19日

まず第1に。

ウイルス感染症の本当の重症化の恐ろしさを理解されていないのでは?

コロナに限らずとのことなので。例えば誰でも知ってる麻疹。はしかです。罹ったことあるのは年寄り世代ですね。小生はかなり古い人間なので自然感染した記憶があります。それはそれはシンドイものでした。幸い後遺症なく成長しましたが、自然感染で重症化する確率は、日本では約0.3%程度とされています。

たかが0.3%。されど0.3%です。

(ちなみにこれ、アルファ株の大阪での30代の重症化率よりは少し低い位)

確率は0.3%ですが、運悪く重症化の当たりくじが当たってしまった人にとっては100%。凄く有名な病気で、途上国ではまだまだ怖い病気なのに、相変わらず特効薬がないのは、新型コロナと同じです。合併症として有名な脳症。重症化した場合の致死率は20%にもおよび、回復しても、高確率で重篤な後遺症。知的発達障害、ヘタすりゃ一生寝たきり状態です。一撃で本人ばかりでなく、親兄弟の人生まで台無しリスクです。

ちなみにはしかは、新型コロナウイルスよりも遥かに感染力は高いです。ガチで空気感染しますから。だからワクチンで防ぐのが基本中の基本。

はしかには、SSPEという極めて稀ながら、発症すればほぼ助からない重篤な遅発性合併症(感染から数年後に発症する)があります。素人さんならそんなの全く聞いたことがないかもしれませんが、自然感染なら数万分の1にみられるとされ、ワクチン接種では100万分の1になると言われています。小生は昔大学病院でその恐ろしさを目の当たりにしたことがありますが、ワクチンが行き渡った今ではもう国内で経験することはあまりないでしょう。少子化も進んでいるので、国内で1年に1例あるかないか位の発生のはずです。

コロナも重症化したら、合併症としての様々な血栓症は時に致死的。回復しても大きな障害を残したりする。肺も機能が完全には戻らず、常に酸素吸入をしなければ生活ができなくなったりするのですよ。治療方法は少しずつ改善されていますが、予防に勝る治療なんてありません。

で、治療薬が出来ればワクチンはいい、不要。本当にそうでしょうか?

国内では幼児にヒブ(インフルエンザb菌)、肺炎球菌に対するワクチンが近年では定期接種になっています。これら細菌感染症には、誰でも知っている有効性の高い抗菌薬がちゃんとあります。でも、ワクチンがあるなら、ワクチンを打っておいた方がいいのですよ。定期接種化される前には、これら細菌による髄膜炎が年に1000例程は出ていたのです。髄膜炎を発症してから抗菌薬を使っても全員は救命出来ない。致死率は高いし、後遺症を残すリスクがかなり高い。

だから治療薬はあってもワクチンを行う様になったのです。

家でたとえてみましょう。火事になってから消火するよりも、火事にならない方がいいに決まっているでしょ。燃えちゃった後では、完全に元通りにはならないのです。ボヤだってノーダメージとは言えないのですよ。貴方の大事な体やそのパーツは、壊れたり調子が悪くなっても返品や取り替えのきかない一点ものです。遠い将来は知りませんがね。

“特効薬開発しろ、特効薬開発しろ”と呪文の様に仰る方を時々見かけますが、ではそんな貴方に聞いてみたい。

ワクチンでなく、治療薬で克服できた、あるいはしつつあるウイルス感染症っていくつあります?

急性ウイルス感染症で、有効とされる治療薬、いくつ知ってます?

過去の医学の歴史に学びましょう。知らなかったら、SNSではなく本を読みましょう。

ウイルスに対する治療薬がないとは言わないが、とても少ないし、開発にはワクチン以上に膨大な時間を要するのです。で、苦労して開発された抗ウイルス薬です。大抵副作用がキツく安易に使いにくいのが定番。これもちょっと勉強してみたらその理由がわかります。

第2に。キャリア(無症候性感染)の意味を誤解されていませんか?

たしかに新型コロナワクチンで完全には感染を防ぐことはできません。でも、ワクチンの効果で体内のウイルス量が減る確率が高い。だから、同じ様に見える無症候感染でも、第三者にうつす確率は下がるのです。

コロナについていえば、発症前後のウイルスの排泄量の多さが、感染拡大を止められない大きな要因。その確率を減らすことができれば、感染拡大のペースは落ちるはず。実際にワクチン接種が先行している医療機関や高齢者施設では、従事者の陽性率が下がり、クラスター発生頻度もさがっているのです。

ワクチンにより利益が、不利益を上回るからワクチンを使う。

人類の感染症に対する戦いの歴史と、多くの犠牲者達。貴重な経験と代償を受け止め乗り越えた先人達の知恵の結晶がワクチンです。個別ワクチンの意義や価値は様々であることはよしとして、その真の価値を十把一絡げに軽視する者は、いつかそれなりの報いを受けるでしょう。

ここまで読まれた貴方が、その1人にならないことをお祈りいたします。

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