参考:Quora
Yasuma Daisuke, 製薬会社に勤務
回答日時:7月26日
近い質問のリクエストが多数来てるので以前から思ってた事を書きます。
新型コロナワクチンが日本でなかなか開発出来ず、海外に遅れを取っている理由です。
感染者数の少ない日本の治験は難しいというのが一般的な回答ですが、違います。資金不足です。本気で開発してないからです。
私は10年ほどワクチンの販売に携わってますが、明らかに日本はワクチン後進国です。
今ワクチン供給をしている製造会社は、阪大ビケン、北里、KMB(旧化血研)、デンカ。数ある製薬メーカーの中でも中小企業の会社です。だから新しいワクチンの開発も製造も販売も出来ません。
大手製薬メーカーが儲からない、(訴訟リスク高く、供給体制を整えるのが困難)なので及び腰で着手しません。武田、アステラス、第一三共等の大手が直接やらないと開発や供給体制の充実は無理です。国は紐付けをしたかったのですが、大手がリスク回避で積極的ではありません。武田は継続的にやってるように見えますが、やったりやらなかったりを繰り返す印象です。大金注入して、腰を据えてワクチンをやる大手の会社は殆どありません。田辺三菱くらいかな。
新型コロナのワクチンに別の大手製薬メーカーが名乗りを上げましたが、「今までワクチンやってないのに大丈夫?」という感があります。
国がワクチン開発に何十億か開発援助行ったという話がありましたが、ワクチン開発に関してこの額は雀の涙。焼け石に水です。
日本はワクチン開発に実績があります。世界初の破傷風トキソイドの開発は北里柴三郎の功績です。阪大微研の高橋先生の水痘ワクチン(岡株)は世界中で水痘、帯状疱疹ワクチンとして使われています。ですが、製造販売を世界的に行っているのは、水痘ワクチンの権利を買い取ったMSDが行っております。
本来日本はワクチン先進国、輸出国になって良いだけの研究者の功績があります。しかし、どれだけ研究開発が優れていてもリスク背負って製品化を進めないと利益還元しませんし、それを怠ってきたのが現状です。
なぜこんな事になっているか?国、医療関係者、国民がずっとワクチンや公衆衛生のシステム、啓発活動を疎かにしてきたからです。
廉価でワクチンを販売し、利益が出せず、現在のワクチンの供給体制すらおぼつかないワクチン会社。訴訟一発で吹き飛ぶので日本のワクチン開発は周回遅れです。
なので海外のワクチンに頼っています。ヒブ、ロタ、HPV、帯状疱疹、日本は独自開発する技術はあっても、リスクを冒して開発しないので、輸入に頼っています。なので高いです。めちゃくちゃ外資に足元見られています。でも誰もこの問題を解決する気がありません。
根本的にこの問題を解決するには国が大きくワクチン会社に資金注入するしかありませんが、このQUORAですら陰謀論や反ワクチン思想の方が多くなって来た現状、国民の理解を得るのは難しいでしょう。正しいワクチン、公衆衛生の啓発を行い、下地を作る努力がまず必要です。
河野大臣が初めて政治家としてワクチンデマの否定をしてこの問題に着手し始めました。少しだけこの問題解決に前進するよう期待しています。
2021/07/26想像以上に読んでもらえたので追記を。なんか外資メーカーを悪く書いた気がしたので。
外資のワクチンは日本のワクチンに比べ高いですが、先進国の適正価格としては逸脱してません。日本のワクチンが安すぎです。また、日本にワクチン供給しているようなビッグファーマは先進国で高くワクチンを販売する分、発展途上国には超安価でワクチンを提供しています。ビル・ゲイツらはそこでかなり資金提供してます。だからこそ先進国には強気の価格です。
なので理想的には日本にもそういった「世界でも評価される独自のワクチン開発、製造を行う事が出来るような会社」が出来るのが理想です。
研究者のレベルは決して低くありません。あとは金と仕組みの問題です。