参考:Quora
川野 光里, PC NOWのコンピューター研究者(2001年~現在)
更新日時:8月5日
私の両親は、若い時すでに「将来年金は破綻するよ。払わない方がいいよ」と言われ、父母両方ともそれを信じ、国民年金を払わないまま老人になりました。その結果、父が若い頃短い期間入社していた会社の厚生年金がほんのわずか入ってくるだけで、それ以外は年金収入のない夫婦になっています(父はほとんど自営業、母は完全に専業主婦でした)。彼らには私を含め3人の子供がいます。全員成人し、1人は主婦、1人は無職、1人は会社員になり、結局、会社員の息子一人で親を支えて生活しています。
つまり、年金がない場合は、子供の収入に頼るしかないわけです。もし子供がいなければ、即、生活保護です。両親も若い頃は一生働く気でしたが、今は体も動かず、できる仕事もなくなり、家で寝ているかオリンピック中継を見ているかのどちらかです。
父は元々会社員でしたが儲からず、金型工場に弟子入して金型制作の特殊技能を身に着け工場を設立しました。設立当時は金型需要もあり、手加工しか方法がないため、金型職人はどこでも引っ張りだこ。腕の良い職人だった父は高給取りで、金型を作れば作るほど売れたそうです。おかげで非常にお金持ちでした、一時は。
しかし30~40年も職人を続けていると時代が変わります。金型はCADで作る時代が来ました。腕一本で勝負してきた父の腕の値段は暴落しました。代わりに品質の良いCADシステムや金型掘削加工機が重宝されるようになりました。同時にコンピューター技術者が台頭してきました。金型は機械で作る時代になったのです。
手作業が機械化されるとどうなるかを父は知りませんでした。機械は疲れを知りません。そして手作業の10倍以上速く作れてしまうのです。腕の良い職人であった父は最後まで「機械が人間に敵うはずがない。機械の精度は人間の1/1000程度だ」と言い張って、自分の工場をまったく機械化しませんでした。機械化したくても1000万円単位でお金がかかります。そんな資金はありませんでした。
やがて金型の相場は暴落します。そりゃー機械でいくらでも誰でも作れるんですから当然です、安くなります。また中国などの海外の職人(彼らの人件費はクソ安い)の技術も向上し、輸入金型とも競争が発生しました。それでさらに相場は安くなりました。
もう一人の人間が手作業でいくら金型を作っても採算が取れなくなっていました。こうして父の工場は潰れました。
上記の話は、「老後はYouTuberとかコンビニバイトとかすれば大丈夫さ」と楽観的すぎる未来を想像している若者に読んでほしかった事実です。
若者たちよ、君たちが老人になった頃、YouTuberという職業は存在せず、コンビニバイトは全て機械化されて人間の入る余地はありませんよ。どうしますか?
最低限、年金制度に加入しておくのが賢い選択だと、私は思います。もしも年金制度が崩壊して無くなるというのであれば、結婚して子供をたくさん産んでおくのが最も確実だと思いますが、いかがでしょうか?