人付き合いは「腸内フローラの多様化」を促す:研究結果

参考:WIRED 2016.05.15 SUN

健康に大きな影響を及ぼすとされる腸内フローラ。その多様性を生み出すのに、食生活はもちろん集団や仲間との交流が深く関係しているとする研究結果が示されました。

TEXT BY SANAE AKIYAMA

社会付き合いは運動や食事と同じくらい健康に影響するという、数々の論文をまとめた調査結果が以前発表されたが、どうやら腸内細菌の視点から見ても「仲間と戯れる」のはよい腸内環境を整える秘訣となるらしい。集団内での交流は、健康によいとされる腸内細菌の多様化を促す作用があることが、米デューク大学によるチンパンジーの研究により発表されたのだ。

タンザニアのゴンベ・ストリーム国立公園は、カサケラ・チンパンジーの観察が盛んに行われている研究地域だ。ここで生活するチンパンジーの群れは、食物が豊富な雨季になると、集団でエサを探しまわり、盛んにグルーミングをする。

エサが少なくなる乾季になると、チンパンジーは小さなグループか、単独で過ごす時間が多くなり、必然的に多数との交流が少なくなる。そこで、研究者らは幼年から高齢のチンパンジー40頭を2000〜08年まで追跡調査し、季節ごとに変化するチンパンジーの食生活や活動パターンと、個々のチンパンジーから採取された腸内細菌叢のDNAとの関連性を調べた。

結果は、毎年食べ物が豊富な雨季には、チンパンジーの腸内細菌の種類は乾季と比べて20~25パーセントほど増えていた。しかし、興味深いことに、食物だけに関連付けた場合、季節ごとの腸内フローラの構成には一貫性がなかった。研究グループは、この変動の一因として、細菌の多様化を促すものは、チンパンジーの主食となるフルーツ、昆虫、葉などの食物だけではなく、季節ごとで変わるメンバーとの交流が関与しているとリリースにて述べている。

興味深いのは、血縁関係にないメンバー間の腸内フローラの構成が、親子のものと同じほど似通っていたことだ。赤ん坊の腸内細菌は、母から子へと垂直的に受け継がれるとされるが、これは腸内細菌が、時間が経つにつれて群れのメンバーからも水平的に共有されることを示唆している。エサを探しまわるため集団で行動することの多い雨季は、グルーミング、生殖行為、そのほか多数の排泄物に触れる機会が増加することが、その理由として挙げられている。

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