食道癌予後不良に腸内・口内細菌関与

参考:化学工業日報2016年10月31日 (月)配信

熊本大、リアルタイムPCR法で組織内のフソバクテリウムを検出

 腸内や口腔内に生息する細菌「フソバクテリウム」が、食道がんの予後の不良に関与することを突き止めました。
患者のがん組織を調査し、DNAの解析など行い、同細菌が多く存在すると、炎症性たんぱく質に関連する遺伝子群が変動することが分かりました。
オーラルケアでの、除菌管理や、予防的オーラルケアと、プロバイオティクス(腸内に良い影響を与える微生物)や腸内環境を整えるヨーグルト機能性素材を摂取し、腸内細菌叢(フローラ)バランスを改善することが予後を良好に保つ一つの対策として可能性が考えられます。

 研究グループは、熊本大学医学部附属病院で手術を受けた食道がん患者325人の承諾を得て、切除されたがん組織と非がん組織(正常組織)からDNAを抽出。遺伝子の定量を調べられるリアルタイムPCR法を用いて組織内のフソバクテリウムを検出したところ、がん組織からは正常組織よりも有意に多くの同細菌のDNAが検出されました。がん組織から同細菌が検出された患者は、325人中74人で、約23%を占めていました。

 がん組織から同細菌が検出された患者と検出されなかった患者の2グループに分け、手術後の生存期間を比較。その結果、同細菌が検出された患者グループは、検出されなかった患者グループに対し、有意に生存期間が短かったことが分かりました。

 次に、同細菌陽性と陰性の食道がんから抽出したRNAを用いて、遺伝子解析による遺伝子の変動を調査。同細菌陽性患者では、炎症を促すたんぱく質(炎症性サイトカイン)に関連する一連の遺伝子群が変動していることを確認できたとしています。これらデータを詳細解析すると、「CCL20」や「CXCL7」といった白血球の輸送に関するたんぱく質(ケモカイン)の遺伝子の量が増加していることが分かりました。

 今回の研究から口腔常在菌である同細菌がケモカインを介して、食道がんの進展に関与している可能性が示唆されました。同細菌は腸内フローラにおいて優位な存在ではありませんが、大腸がん組織から高頻度で検出され、大腸がんの進展に影響を与えている可能性のあることが報告されています。

 口腔に近い食道のがんでも悪影響にかかわるとみられ、同細菌の詳細な解析と役割を解明することで新たな対応法が探究できます。その一つとして考えられるのが腸内フローラの改善。乳酸菌やビフィズス菌などの善玉細菌を増やすことが予後の状況改善に導く可能性があります。

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