参考：2018年5月8日 (火)配信神戸新聞

　神奈川県横須賀市で１０日に開幕するウインドサーフィンのワールドカップ（Ｗ杯）に、神戸市北区の４６歳、井津上（いづがみ）典洋さんが初出場します。歯科の開業医を務める傍ら、プロ選手としてトレーニングを重ね、夢をつかみました。両立できず、歯科医師として働くのをやめた時期もありましたが、３児の父となった今では二つの「仕事」に誇りを持っています。

　同市北区で育ち、三田学園中学・高校を卒業。叔父が医師だった影響で長崎大学の歯学部に進学し、ウインドサーフィンに出合いました。「自然のものをいかに自分にシンクロさせ、結果につなげるか」。とりこになりました。

　卒業後は長崎で勤務医をしていましたが、競技への思いが募り、２８歳で退職。家賃月２万４千円のアパートに住んで練習していた頃、長崎でウインドサーフィンをする歯科医師の男性が心配し、声を掛けてくれました。

　「風が吹く日は海に行けばいい。風のない日に私の診療所に来なさい」。２年のブランクを経て、歯科で働き始めた井津上さん。医者しての心構えを学び、患者と向き合う仕事にやりがいを感じるようになりました。

　２００４年、結婚と同時に故郷で開業し、軌道に乗ると、競技でも成績を伸ばしプロになりました。今では週に２、３日、西宮市の甲子園浜や滋賀の琵琶湖などで練習するほか、自宅で懸垂をしたり、小学生の娘たちをおぶってスクワットをしたり。妻の陽子さん（３９）は食事面などで支え「丸１日家にいることがなく、ストイック。夫の体の半分はウインドサーフィン」と笑います。

　Ｗ杯では、風上から風下へマークをクリアしながら進み、速さを競う種目「スラローム」に参戦します。世界、日本ランキングの上位者ら男女計約９０人が集結。時速６０～７０キロに身をさらし、体力やボードを扱う技術が試されます。

　井津上さんの二つの仕事は、つながっています。「口の中が健康だからこそ、プロスポーツ選手としてやれる。僕が頑張ることでそれを伝えられたら」。日焼けした笑顔に、白い歯が映えます。次なる夢は「５０歳でＷ杯出場」です。