IgG4関連疾患…新しい病気 日本人が発見

参考:yomiDr. 2013年5月30日

ステロイドが効果 がんとの区別重要

従来は無関係と思われていた全身の臓器の病的な変化が、実は一つの病気に由来することを、日本人研究者が発見しました。「IgG4関連疾患」と名付けられた免疫の病気で、世界的に注目されています。

臓器にこぶや腫れ

この発見につながったのは、膵臓の炎症で黄だんが現れる病気「自己免疫性膵炎」や、涙腺や唾液腺が晴れて視力障害が出る「ミクリッツ病」の研究です。

自己免疫性膵炎は、免疫反応の異常で膵臓が腫れます。炎症を抑えるステロイド(合成副腎皮質ホルモン)の内服が効きますが、この病気が知られる以前はがんと間違われて膵臓を切除される患者も多かったです。

信州大のグループは2001年、この病気の患者の血中に免疫たんぱく「IgG4」が多いことを報告しました。Ig(免疫グロブリン)のG型は四つありますが、このうちIgG4はIgG全体の2%程度しかなく、機能もよく分かっていません。

同じ時期、東京都立駒込病院消化器内科(現部長)の神沢輝実さんらは、自己免疫性膵炎の患者に胆管や唾液腺の腫れが多いため、患者の組織を調べたところ、膵臓以外に胆管や唾液腺、リンパ節などにもIgG4を分泌する細胞が多数集まっていました。そこで2003年、「IgG4関連全身性疾患」という新しい病気の概念を提唱しました。

ミクリッツ病は欧米では近年まで、涙腺や唾液腺の障害で目や口が乾く「シェーグレン症候群」の一種とされてきました。しかし日本の研究者らは、ステロイドがよく効き、IgG4の値が高いなどの特徴から、シェーグレン症候群とは違うことを突き止めました。さらに、他臓器の病的変化を伴いやすく、自己免疫性膵炎と共通点が多いことも2000年代後半までに分かりました。

これらの成果を総合し、厚生労働省研究班は、一連の症状や病的な変化を「IgG4関連疾患」と命名、11年に診断基準を作りました。同年、米国での国際会議で世界にも認知されました。神沢さんは「国内患者数は約3万人とされるが、もっと多いだろう」と話しています。

症状が表に現れるのは、自己免疫性膵炎や胆管炎、ミクリッツ病などですが、画像検査で全身の臓器にこぶや腫れが見つかることも多いです。臓器は、甲状腺や肺、腎臓、大動脈、前立腺、肝臓など様々で、どの臓器に異常が見つかるかは患者によって違います。

例えば、自己免疫性膵炎でミクリッツ病も合併するのは2、3割です。合併が少ないほど診断が難しく、臓器のこぶや腫れは、がんと間違われやすいです。

がんと誤診しての手術は問題ですが、逆に本当のがんを誤診してステロイドを処方するのも危険です。免疫を下げる作用があるステロイドの処方は、致命的な影響を及ぼしかねません。医師はこの病気の正しい知識を持ち、画像診断や血液検査を行う必要があります。

昨年には、この病気の研究者を集めた新たな厚労省研究班が結成されました。

班長を務める京都大教授の千葉勉さんは「ステロイドは効果的だが100%治るわけではなく、副作用もある。いったん治った後、服用を続けるべきかどうか、ステロイドに代わる治療法はないか、などを検討したい」と話しています。(藤田勝)

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