乳酸菌:生後1ヶ月以内のプロバイオティクス摂取 1型糖尿病リスク低下

参考:「JAMA Pediatrics」オンライン版に2015年11月9日掲載

遺伝的リスクの高い新生児で効果

 生後1カ月以内の新生児にプロバイオティクスを摂取させると、遺伝的にリスクが高い新生児で1型糖尿病発症リスクが低下する可能性が、新しい研究で示されました。ただし、生後1カ月を過ぎて摂取してもこの効果は得られないとしています。

 米サウスフロリダ大学(タンパ)小児疫学准教授のUlla Uusitalo氏は、因果関係は示せないが、関連は非常に強いと指摘。

 1型糖尿病が発症する原因は不明で、複数の遺伝子の関与が指摘されていますが、環境因子も関わるとする専門家もいます。その1つに腸内細菌叢のバランスの乱れが挙げられています。

 今回の研究は、欧米6カ所の医療センターで進行中の前向き研究を調べたもので、最終的な対象者は4~10歳の小児約7,500人。生後3~48カ月の間、6カ月ごとに血液検査を行い、1型糖尿病発症の有無を調べました。また、生後3カ月までの乳児期の栄養摂取状況やプロバイオティクスの使用については、親に質問票で回答してもらい、母親にはさらに妊娠中の食生活についても尋ねました。

 Uusitalo氏によると、プロバイオティクスは、欧州では米国より一般的に利用されているといいます。今回、新生児は、粉ミルクあるいは液体補助食品からプロバイオティクスを摂取していました。

 その結果、生後27日以内にプロバイオティクスを摂取すると、DR3/4と呼ばれる遺伝子型をもつ1型糖尿病リスクが最も高い小児で、1型糖尿病発症リスクが60%低減することがわかりました。一方で、この遺伝子型をもたない小児では、プロバイオティクス摂取によるベネフィットは認められませんでした。また、遺伝子型の有無にかかわらず、生後27日以降にプロバイオティクスを摂取しても、1型糖尿病リスクの低下効果はみられませんでした。

 付随論説の著者で、米ジャクソン研究所ゲノム医学研究所(コネティカット州)のGeorge Weinstock氏は、「プロバイオティクス摂取のベネフィットが生後27日以内に限定されるのは驚きだ」としつつ、「プロバイオティクスの摂取は、1型糖尿病の発症リスクが高い乳児への安全かつ簡便な治療選択肢となる可能性がある。さらなる検証が必要だが、今後の展開に期待できる」と述べています。

 また、同氏は、プロバイオティクスのベネフィットが得られた機序について、生後間もない時期に摂取するプロバイオティクスが、腸内細菌叢のバランスを調整している可能性や、この期間が有害な免疫応答の活性化を阻害する臨界期である可能性も指摘しています。

 1型糖尿病の家族歴がある場合、新生児にプロバイオティクスを与えるべきかどうかについて、Uusitalo氏は「摂取を推奨するには時期尚早」と述べる一方で、もし子どもの1型糖尿病リスクが高いことが明らかであるならば、小児科医にプロバイオティクスの早期の使用について相談するようにと助言しています。

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