参考:化学工業日報 2016年6月7日 (火)
資生堂がメカニズムを解明
資生堂は枸杞(クコ)の実エキスを経口摂取することで、日焼けによる皮膚の紅斑や黒化(色素沈着)を改善するメカニズムを解明しました。枸杞の成分には高い抗酸化作用があり、加齢とともに減少する抗酸化因子グルタチオンの生成を促進し、黒化の原因となる活性酸素を抑制します。日焼け止めの塗布などの紫外線対策に加え、「飲んでケア」(資生堂)することを新たな選択肢として提供していきます。エキスを含む健康食品の開発に力をいれ、気軽に摂取可能な形状への展開、ラインアップの充実を目指します。
杏仁豆腐のトッピングとして知られる枸杞の実は、中国大陸を中心に植生しています。ポリフェノールや多糖類などを豊富に含み、カロテノイドの一種であるゼアキサンチンは枸杞特有で、高い抗酸化作用を有します。枸杞の実には脳機能や肝機能の改善、視神経保護といった効果が報告されていましたが、「皮膚への効能はあまり知られていなかった」(長谷川達也資生堂リサーチセンターライフサイエンス研究センター皮膚科学研究グループ研究員)ため、紫外線ケアに着目した研究を2008年に始めました。
12年までの研究では、枸杞摂取による色素沈着の改善効果を確認しています。被験者に一定量の紫外線を一定期間照射し、枸杞含有成分が効果を示す最低量である28粒分相当のエキス摂取の有無で皮膚状態を観察。摂取後には紅斑量並びに黒化量が「肉眼で見ても分かるほど減少した」(同)。
新たに見出したのは色素沈着が改善する仕組みです。培養した人表皮角化細胞を枸杞の実エキスに24時間浸して紫外線を照射、2時間後に活性酸素の発生量を調べました。エキスなしでは活性酸素が多く生成しましたが、エキスありは生成が抑制されました。同細胞を24時間エキスに浸した結果、浸さない状態に比べて抗酸化因子グルタチオンの生成促進効果もみられました。
日焼け止めや日傘など体外からの対策に対し、経口摂取による体内からの対策という新たな選択肢を示しました。今後は枸杞の実エキスを含む健康食品のラインアップ拡充を図ります。また、紫外線が真皮まで到達することでハリの低下やシワにつながるため、「シワやハリにも効果を示すのか」(同)など研究を深化させます。
ゴジベリーとしてオーガニックに認定されたものは、海外のビタミンショップなどでも見かける。これは肝機能改善や、視神系保護という効果が認められてのこと、今回皮膚への作用が追加された。