「未知の臓器」が人間の喉の奥から発見される

人間の鼻から咽頭にかけての領域に、これまで知られていなかった新しい臓器を発見したという報告が発表されました。発見されたのはわずか3.9cmという小さな器官で、がん細胞の研究中に偶然見つかったとのことです。

The tubarial salivary glands: A potential new organ at risk for radiotherapy – ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0167814020308094

Cancer researchers discover new salivary gland
https://medicalxpress.com/news/2020-10-cancer-salivary-gland.html

発見したのは、オランダのオランダがん研究所(NCI)のウーテル・フォーゲル氏とマティス・ファルスター氏らの研究チームです。研究チームは、前立腺がんを検出する「PSMA PET-CT」と呼ばれる画像診断法を使い、前立腺がんの研究を行っていました。PSMA PET-CTは、患者に注入した放射性のトレーサーを、前立腺がんに多く含まれるタンパク質のPSMA(前立腺特異的膜抗原)と結合させ、検出するという画像診断法です

トレーサーと結合するPSMAは、前立腺がん細胞だけではなく、唾液腺組織にも多く含まれているため、PSMA PET-CTでは唾液腺も多く検出されます。これまで、1000個以上の目に見えない唾液腺が喉や口の粘膜組織に散在しており、特に「舌の下」「下顎の後ろ」「頬の後ろ」の3カ所に集中していることがわかっていました。

しかし、研究チームがPSMA PET-CTを行ったところ、鼻から咽頭にかけての領域で、唾液腺が集中した2つの領域が対となってはっきりと画像に表示されたとのこと。以下の画像で、青い矢印によって指し示されているのが新しく発見された唾液腺組織です。

フォーゲル氏は「人間は3種類の大きな唾液腺を持っており、さらに粘膜上には1000個以上の目に見えないほど小さい唾液腺あるいは粘膜線が均一に広がっています。そのため、鼻咽頭に大きな1対の唾液腺を発見したときは驚くべきものでした」と語っています。

フォーゲル氏とファルスター氏は、100人の被験者を対象にPSMA PET-CTを行いましたが、この新しい唾液腺は100人全員から発見されたとのこと。2人は新しく発見された臓器を「Tubarial Glands(管状腺)」と名付けました。

研究チームは、管状腺の発見が今後のがん治療にとっても重要だとしています。管状腺は唾液を分泌するため、がんの放射線治療で管状腺が損傷すると、患者の食事や会話に影響を与え、クオリティ・オブ・ライフを損ねてしまう可能性があります。フォーゲル氏は「次のステップは、新しく発見された管状腺を、どのようにして患者に最適な形で残すことができるかを見極めることです。それができれば、患者が抱える副作用が少なくなり、治療後のクオリティ・オブ・ライフを向上させることができます」と述べました。

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