コロナワクチン、「フィリピンの悲劇」再来となるのか

参考原稿:谷口 恭先生(太融寺町谷口医院)

筆者はコロナワクチンを受けています。その上で、『ファイザー社、モデルナ社ともにワクチンの有効率は95%とされていて、これはズバらしい数字だが。ワクチンは有効率がここまで高くなくても有益だと思う。より重要なのは安全性の方だ。』と言います。

アナフィラキシーの頻度が他のワクチンよりもわずかに高いです。過去に幾つかのワクチンで問題となったギラン・バレー症候群のような神経症状も現時点では報告が少ないです。ですが、そういった副反応よりも検証に時間がかかる、遅延して起きる副作用。「抗体依存性感染増強(関連記事:新型コロナのワクチン開発、専門家が気にする”ある副作用”)」だそうです。

フィリピンで5年前に起きたワクチンの“ギニーピッグ”の例を考察し、簡単にまとめると次のようになるようです。

2016年4月、フィリピン保健省は一部の地域の公立学校に通う約80万人の子どもに対し、サノフィ社製のデング熱ワクチン「Dengvaxia」の接種を開始しました。時期尚早ではないかとする反対意見が多く、この時点ではWHOもこのワクチンを推奨していませんでした。7月、WHOはこのワクチンを条件付きで推奨することにしましたが、その頃からワクチンを接種した小児がデング熱に感染すると重症化し、中には死に至るケースが相次ぎました。

ワクチンとの因果関係が否定できず、2017年11月29日、サノフィ社は「Dengvaxiaをデング熱ウイルスに感染歴のない子どもに投与すべきでない」と発表しました。これを受け、フィリピン保健省は直ちにこのワクチンの予防接種プログラムを停止し、ワクチンの販売を中止しました。12月5日、WHOが「ワクチンの中止を決定したフィリピン政府を支持する」と発表しました。さらに2018年、ワクチンに関するポジションペーパーを改定し、「摂取前スクリーニングを行い、デング熱の既往が確認された者(抗体陽性者,またはデング熱が検査診断された既往のある者)のみにワクチン接種を行う方法を推奨する」としています(感染研の関連サイト)。

香港の英字新聞「South China Morning Post」によると、2019年4月時点でフィリピンの約600人の小児が、ワクチンが原因となり死亡した可能性があるといいます(なお、この事件の詳細は毎日新聞「医療プレミア」の拙コラム「62人死亡?比デング熱ワクチン導入の“失敗”」「人ごとでないフィリピン『ワクチン不信』と麻疹急増」を参照(現在本コラムは無料で閲覧できます))。

フィリピンでは失敗しブラジルで成功しているのはなぜ?「年齢」です。ブラジルでは15~27歳が対象なのに対し、フィリピンでは小学生がプログラムの対象でした。では、なぜ年齢で差がでるのでしょうか。恐らくブラジルではワクチン対象者の多くが幼少時にデング熱に感染しているのに対し小児が対象となったフィリピンではそうではなかったのです。つまり、未感染の小学生にワクチンを接種したが故に接種後デング熱ウイルスに感染したときに抗体依存性感染増強現象が生じたのではないかと考えられるのです。

以前から、デング熱は2回目の感染時に1回目とは異なるタイプに感染すると抗体依存性感染増強現象が生じ重症化することが知られています。一方、新型コロナにそのような報告は(恐らく)なく、再感染することはまれです????

ですが、BNO newsが提供するCOVID-19 reinfection trackerによると、2月7日時点でSARS-CoV-2再感染の確定例が世界で47例報告されています。中には初感染時より重症化している例もあり、2例は再感染時に死亡しています。また、疑い例は1万人以上に上り30人が死亡しています。もちろん分母は1億を超えるわけですから、確率からすると微々たる数字ではあります。

それに、デング熱と同じようにSARS-CoV-2も2回感染することがあるからという理由だけで抗体依存性感染増強現象が生じ、さらにワクチンがフィリピンのDengvaxiaと同じ運命をたどる可能性がある、などといえば、これは論理の飛躍であり、識者には一笑に付されるかもしれません。ですが、絶対に起こらないと証明することもまた困難なのではないでしょうか。

フィリピンの事件が起こったのはそれほど遠い昔ではなく、わずか5年前。しかもDengvaxiaは20年の月日をかけて開発されたワクチンなのです。それだけの時間をかけ安全性も担保されたはずだったワクチンが市場に登場し、600人以上の子どもが犠牲になった可能性が高く、フィリピン政府は2019年2月に「Dengvaxiaを永久に禁止する」と発表したのです。

アナフィラキシーを除いたファイザー社/BioNTech社製ワクチンの重篤な副作用として、米国の医師に生じた特発性血小板減少性紫斑病(ITP)での死亡、さらにノルウェーの複数の高齢者に起こった死亡事例はありますが、ファイザー社によるといずれもワクチンとの因果関係を示したエビデンスはないとのことです。

WHOのワクチン安全性諮問委員会は1月22日、これまでの情報からは高齢者においてもワクチンの利益はリスクを上回るとしています。とはいえ、各国はワクチンの安全性を引き続き監視することも求めています(WHOの関連サイト)。今後、ファイザー/BioNTech社のみならず、全てのワクチン製造・販売会社は副反応の詳細を可及的速やかに報告してもらいたいです。

 

Dr.堤より
全く同感だけど、コロナはインフルよりも、ワクチンの致死率も100倍となっているらしい。

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