GMのGMCブランドは1月26日、『ハマーEV』（GMC HUMMER EV）が、オフロード電動SUVレースシリーズの「エクストリームE」に参戦すると発表しました。
およそ10年ぶりに復活したハマーは、GMCブランドのEVピックアップトラックとして登場しました。ハマーEVは、パワフルなEVパワートレインを搭載する高性能ピックアップトラックです。
ハマーEVは、米国ミシガン州デトロイトのハムトラムク工場を改修したEV専用工場、「ファクトリーゼロ」において、2021年後半から生産が開始される予定です。ファクトリーゼロは、GMのマルチブランドEV戦略の出発点になる工場で、GMはファクトリーゼロへの改修に22億ドルを投資し、EVだけを量産する工場に変更します。
1回の充電での航続は最大563km
ハマーEVには、3モーター+4WDの「e4WD」システムを搭載します。このシステムは、ドルクベクタリング機能を備えており、最大出力1000hp、最大トルク159kgmを獲得します。0～96km/h加速は、およそ3秒の性能を可能にしているといいます。
ハマーEVは、GMの新世代EVパワートレインの「アルティウム・ドライブ」をベースにしています。中でも、「アルティウム・バッテリー」は、大容量のパウチ型セルをバッテリーパック内で垂直にも水平にも積み重ねることができる方式を採用しました。これにより、エンジニアは各車両のデザインに応じて、バッテリーの蓄電容量やレイアウトを最適化することができるといいます。
アルティウム・バッテリーの蓄電容量は、50~200kWhと幅広いです。ハマーEVの場合、航続はフル充電で最大563kmを想定しています。バッテリーの充電は、800ボルトのDC急速充電に対応します。出力350kWのDC急速充電ステーションでも充電することができます。
オフロード向けの「エクストリーム・オフロード・パッケージ」
オフロード向けの「エクストリーム・オフロード・パッケージ」には、18インチホイール、35インチのグッドイヤー「ラングラー・テリトリーMT」タイヤ、アンダーボディアーマー、ロックスライダー、アンダーボディカメラがセットされています。
「インフィニティルーフ」は、取り外し可能なスカイパネルで、車両の前部の「フランク」（トランク）スペースに収納できます。パワーリアドロップガラスとパワートノカバー、「MultiPro」テールゲート、13.4インチのインフォテインメントスクリーンと12.3インチのドライバーインフォメーションセンターディスプレイが装備されています。
ハマーEVには、「クラブウォーク」と呼ばれるモードが用意されます。カニは英語で「クラブ」。クラブウォーク（カニ歩き）は、4輪ステアリングシステムによって、最小回転半径を短くする技術となります。セグメントをリードする「エクストラクトモード」を備えたアダプティブエアサスペンションも、オプションで選択できます。
ハマーEVベースのオフロードレーシングカーを開発
このハマーEVがオフロード電動SUVレースシリーズのエクストリームEに参戦します。エクストリームEシリーズは、「フォーミュラE」を立ち上げた団体によって創設されました。電動SUVだけで競うエクストリームEの特長は、絶滅危惧種の生息地のすぐ近くにレース会場を選んでいることです。レーシングシリーズの目的は、世界中のモータースポーツファンだけでなく、開催地の政治家、地域社会、当局にも気候変動に目を向けさせることであり、地球温暖化を1.5度に抑えるための取り組みをさらに強化することにあるといいます。エクストリームEシリーズは2021年4月、サウジアラビアのアルウラで開幕する予定です。
GMCは、米国に本拠を置く「チップガナッシレーシング」と複数年契約を結び、エクストリームEに参戦します。チップガナッシレーシングは、「インディカー・シリーズ」、「NASCARカップシリーズ」、「IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権」に参戦中で、「インディ500」を4度制するなど、225以上の勝利を達成しています。
チップガナッシレーシングが持つ豊富なノウハウを、エクストリームEに投入します。ハマーEVベースのオフロードレーシングカーを開発しており、専用ボディやグリル、グラフィックスが特長です。エクストリームEのレギュレーションにより、最大出力は550hpに抑えられる、としています。
《森脇稔》