参考:2018年2月7日(水)配信 読売新聞
年齢とともに、ものをのみ込む力が弱ってくると、食べ物などが誤って気道に入って、肺に炎症が起きることがあります。これが誤嚥性肺炎です。肺炎は日本の死因第3位ですが、肺炎にかかった高齢者の大部分は誤嚥性肺炎とされており、日頃からの予防が大切です。(冬木晶)
なぜ起きる?
食道を通るはずのものが、誤って気道に入ることを「誤嚥」と呼びます。加齢や病気などで喉や舌の筋肉が衰えてくると、食べ物をうまく食道に送り込めず、誤嚥してしまいます。
口の中には、肺炎の原因となる肺炎球菌や黄色ブドウ球菌などの病原菌がひそんでいることがあり、これらの病原菌が食べ物とともに肺まで入ると、肺炎を起こします。寝ている間に、病原菌を含んだ唾液が気道に流れ込んでも発症します。
症状は?
基本的には通常の肺炎で同じで、38度以上の熱と、せきやたんが出るのが特徴です。
しかし、のどの機能が低下してせきやたんが出ない高齢者も多く、周囲が発症に気付かずに重症化するケースがよくあります。「なんとなく元気がない」「食欲がない」など、普段と違った様子があれば、肺炎にかかっている可能性もあるので注意しましょう。
どう治すの?
肺炎の重症度などに応じた抗菌薬を投与します。入院治療の場合は、食べ物が再び肺に入らないよう、一時的に絶食することもあります。水分や栄養は点滴で補給し、1週間程度で肺炎自体は改善していきます。
しかし、のみ込む力が弱いままでは再発するおそれがあり、のどや舌の筋肉をきたえるリハビリが必要になります。
まず、のみ込む力がどのくらいあるのかを、簡単な「水飲みテスト」で確かめます。スプーン1杯の水を患者の口に含ませ、のみ込んでもらいます。水がのみ込めなかったり、むせてしまったりする状態ならば、食べ物は再び気道に入ってしまう可能性があります。
のどなどをきたえる方法としては、「パタカラ体操」が有名です。「パパパ…」「タタタ…」「カカカ…」「ラララ…」と短く発声する練習を繰り返します。水飲みテストでむせなかったり、自分のつばものみ込めるようになったりすれば、徐々に通常の食事に戻していきます。
予防には?
普段からパタカラ体操などを行って、のみ込む力を維持させることが大切です。しかし加齢とともにどうしても筋力は低下してきます。そうなると、口の中の雑菌を減らす口腔ケアが欠かせません。夜寝る前の歯磨きを徹底し、歯間にたまりやすい汚れにも気をつけましょう。入れ歯も清潔に保つようにしてください。
特に寝たきりの人には、専用のブラシを使って介助者が口の中をきれいにするケアが重要です。食事の後に食べ物が口の中に残っていないかを確認し、食後1時間は、ベッドを30度傾けて上体を起こすようにすると誤嚥しにくくなります。
医療法人医誠会摂津医誠会病院の西山勝彦・副院長は「のどをきたえるには会話を増やし、歌うことも有効で、予防の取り組みを地道に続けることが大切です」と話します。