「美」感じる脳の部位発見 医療分野への活用も期待

参考:共同通信社  2014年11月25日(火) 

 人が絵画や音楽を「美しい」と感じたとき、脳の一部分の血流量が増加する―。英ロンドン大神経生物学研究所の石津智大(いしづ・ともひろ)研究員(34)=神経美学=のチームが米専門誌などに発表した研究結果が注目されています。この部位はうつ病や認知症などの疾患で活動が落ちるとされ、石津研究員は「『美』によって活性化させる手法は、医療の分野などで生かせるのではないか」と期待されています。

石津研究員のチームは「美しさ」に反応する脳の動きを探るため、人種や宗教などが異なる22~34歳の健康な男女21人を対象に、機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)を使った実験を実施しました。肖像画や風景画などを16秒ずつ順に45枚提示し、美しいと感じたかどうかを示してもらいました。

その結果、美しいと感じた場合、美しくないと感じた時と比べ、前頭葉の一部にある「内側眼窩(がんか)前頭皮質」と呼ばれる領域で血流量が増加し、働きが平均で約35%活発化する共通性があることを確認しました。美しいと強く感じるほど、活動量も増えることが分かりました。

この21人に音楽を聞かせた場合でも同様のデータが得られたといいます。ほかにも多くの実験を重ねた石津研究員は「科学の世界では、美に関する感情は客観的に測定できないと考えられてきた」として研究の意義を強調しています。

医療関係者の間では、この脳の領域については、機能が低下すると、うつ病を含む精神疾患の一つである「気分障害」などを招く可能性があるとされてきました。

石津研究員は「欧米では、前頭葉に電流刺激を与えて活動を促す治療法が既に採用されている」と指摘。こうした状況を踏まえ、チームの研究成果も有効な治療法になり得るとし、「病院や高齢者施設が美術作品を多く取り入れるなどの方策が検討されるようになれば」と話しています。

注)論文が掲載された専門誌は米オンライン科学誌プロスワンなど

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