参考:化学工業日報 2016年5月27日
皮膚幹細胞の同定・可視化に成功
筑波大、高機能化粧品開発に期待
筑波大学の研究グループは、皮膚をつくる幹細胞の同定・可視化に成功しました。マウスの皮膚を調べ、2種類の異なる表皮幹細胞が共存していることを突き止めました。幹細胞の目印となる複数の分子マーカーを見つけ出し、これがヒト表皮でも同じ発現パターンを示すことも分かりました。成果をヒトへ応用すれば、肌老化の的確な予防技術の発展、新規作用機序を採用した高機能型化粧品の開発につながると予想されます。
今回、得られた表皮の幹細胞に関する成果は、ゆっくりと分裂する細胞と、活発に分裂する細胞に異なる2種類が存在しているという新知見です。皮膚をつくる幹細胞は、目印の分子マーカーが見つからなかったことから、数ある細胞のうち、どの幹細胞集団に本物の幹細胞が存在するのか分かりませんでした。今回の成果により特定できました。
新知見によれば、研究グループは特異的な分子マーカーの探索とさまざまなマウスモデルを組み合わせ詳細な解析を実施したところ、2種類の幹細胞が皮膚の異なる領域に局在し、それぞれ幹細胞として働いていました。また、両幹細胞は皮膚の損傷時など相互に機能補完する機能を持つことも分かりました。
皮膚をつくる幹細胞をめぐっては、古くから「階層的幹細胞/TA細胞モデル」というモデルが提唱されていました。同モデルは一つの幹細胞「組織幹細胞」が存在し、ゆっくり分裂して細胞の老化やがん化を防いでいるとされてきました。一方で同細胞から分化し活発に分裂する細胞は「TA細胞」と呼ばれ、分化によって幹細胞の機能をすでに失っていると考えられ、アカデミアではこの説がほぼ主流を占めていました。
研究グループによる成果は、このモデルの概念を覆す新発見にあたり、活発に分裂する細胞にも幹細胞の機能があるとする証拠を得ました。